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2013年度 活動報告 海事政策科学研究theSIS

1. 日本の港湾に関するセキュリティ対策-制限区域(水域)の現状と問題点
2. インド洋西部における海上輸送の安全保障
3. 日本における小型船舶に関する海難問題
4.「船舶海洋への宇宙利用:政策と技術の革新に向けて」セミナー開催
5. 国際活動
6. 論文等


1. 日本の港湾に関するセキュリティ対策
       -制限区域(水域)の現状と問題点

                 海上保安大学校教授(神戸大学客員教授)    松本宏之
 2001年9月の米国同時多発テロの発生によって、海運の分野でもセキュリティの重要性が再認識され、2002年12月に改正されたSOLAS条約に対応するために、わが国では2004年4月7日に、「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律」(平成16年法律第31号;以下、「国際船舶・港湾保安法」という。)が成立し、同年4月23日に一部施行され、同年7月1日に全体が施行された。国際船舶・港湾保安法では制限区域を設けることによって細かな出入管理を行っているが、陸域についてはフェンス等で隔離されているものの、水域については一般水域と制限区域を隔離することが困難であり、一般水域との境界線も明示されていない。したがって埠頭保安規程に比べると、水域保安規程の内容については、相対的に手薄なセキュリティ体制となっている。
一方、港湾セキュリティに関する実質的な措置は港湾管理者が行うことになっており、水域における制限区域については、基本的には港湾管理に関する条例などで明示されている。しかしながら、条例は全国一律的な法律と違って適用水域が限定的であり、責任主体も港ごとに担当しているので、港湾によって水域部分の制限区域の広さや明示方法等が異なることが考えられる。本研究では、港則法上は1つの港になっているものの、港湾管理上は複数の港に分かれているもののなかから、京浜港、阪神港、関門港を対象として、制限区域(水域)の規定方法や港湾セキュリティの実効性等について、港湾管理者に対するヒヤリングを中心とした調査に基づき考察を行った。
 その結果、制限区域(水域)の規定方法は、すべての港においてほぼ同様の形態をとっており、国際船舶・港湾保安法を法的根拠として、地方自治体で港湾管理に関する条例の形式で立ち入り禁止等の制限を定め、その詳細については告示によって公表する方法になっていた。しかしながら、制限区域(水域)の幅員(延長)等に関しては港によって異なっており、東京都港湾局、横浜市港湾局、神戸市みなと総局、北九州市港湾空港局、下関市港湾局は、想定している最大船型を基準として算定された岸壁からの一定の幅を制限区域(水域)としているが、大阪市港湾局だけは実際に係留している国際航海船舶の周囲30メートルの区域内としており、着岸する船舶の大きさによって制限区域(水域)が変化するために、規制する対象水域も国際航海船舶によって異なることになる。これは、阪神港という港則法上1つの特定港における規制対象の設定基準が異なることを意味しており、実質的には港湾セキュリティ上の支障はないものの、統一性の欠ける規定方法になっている。また、制限区域(水域)の範囲を港湾管理者が決定するのか、あるいは下関港のように特殊な委員会が決定するのかについても、実態としては同様なものになるものの、港湾セキュリティの責任主体の意義を本来の目的に鑑みて整理すべきであると考える。
 一方、制限区域(水域)は立ち入りを制限する条例上の明文規定があるものの、東京港と横浜港には実効性を担保する制裁に関する規定がなく、軽犯罪法に頼らざるを得ない状況にあった。さらに違反者に対して過料によって制裁を行う条文を設けている大阪市港湾局、神戸市みなと総局、北九州市港湾空港局、下関市港湾局においては、その額が一律に5万円になっているが、北九州市港湾空港局では1万円となっていた。過料の額に関する基準は明確ではないものの、港湾によって異なることへの疑問もあり、とりわけ関門港という1つの特定港にもかかわらず、対岸の港どおしで違反者に対する過料の額が異なるのは説明が難しいと思われる。加えて、どの法的根拠に基づいて制裁を与えるにしても、その規制ラインを現場の岸壁前面あるいは着岸している国際航海船舶の周囲に明示されていないので、立ち入りを制限される側からみれば、どこまで接近すれば違反となるのかが認識できない可能性があり、法適用上の問題が生じるおそれがある。
 さらに、国際船舶・港湾保安法に基づく制限区域(水域)の制度上の問題として、港湾管理者による管理の視点からのセキュリティと、海上保安庁や警察などによる警備の視点からのセキュリティのとらえ方の違いから派生するセキュリティ対策の二重構造があげられる。すなわち、制限区域が設定される港湾の水域のセキュリティに対して、陸上に基点をおく港湾管理者は施設管理の延長線上でとらえるスタティックなアプローチをする反面、海上に基点をおく行政機関は交通媒体たる船舶の港内の移動も含めたダイナミックなアプローチをする傾向にある。
最後に、陸上の制限区域にはフェンス等を配置することにより、物理的に区域を閉鎖することが可能であるが、海上の制限区域は物理的に誰でも侵入でき、フェンスのような明確な境界も示されない。したがって、海域利用調整におけるツールであるゾーニングの手法を用いて、制限区域(水域)の近くにはプレジャーボートや漁船等がみだりに航走しないような航行環境の整備等も重要であると思われる。また、港湾セキュリティは国際航海船舶に限らず、すべての港湾利用者にかかわる問題なので、関係者の協力を得られる体制づくり、情報収集・連絡体制の整備等も必要である。

2. インド洋西部における海上輸送の安全保障
                        神戸大学大学院国際協力研究科 高橋正樹
                               神戸学院大学 杉木明子
 スエズ運河―紅海―アデン湾―インド洋西部における日本の海運会社による海上安全対策および海賊取締対策の現状と課題を現地調査に基づき分析・考察し、当該地域における海上輸送にかかる海事政策への提言を試みる。本年度は乗船による実態調査を企画したが、乗船調査には危険が伴うことから、船社から乗船調査はできないとの回答を得たため、現地港湾に赴き船舶への聞き取り調査とした。
 アデン湾・ソマリア沖で発生している海賊問題(以下、ソマリア海賊問題)は海上輸送の安全に対する脅威であり、海上輸送に依存する日本にとって重要かつ国際貢献が求められている問題である。武器の調達、襲撃する船舶の選定と襲撃、人質の拘束と身代金の交渉、マネーロンダリング等の一連の「海賊ビジネス」は、海賊組織の本拠地であるソマリアにとどまらない。これらの「海賊ビジネス」は世界各地に離散しているソマリ・ディアスポラ中心としたグローバルな犯罪ネットワークと東アフリカ・中東地域における経済構造などが複雑に絡んでいる。
 本年度の聞き取り調査から、次年度は、海運および海上警備・海賊対策の拠点であるナイロビ・モンバサ(ケニア)、およびドバイ(アラブ首長国連邦)で調査を行う予定である。

3. 日本における小型船舶に関する海難問題

                          神戸大学大学院海事科学研究科 藤本昌志
 本年度は昨年度に引き続き、漁業従事者の聞き取り調査を実施した。2013年1月29日から9月25日において大阪湾に面している大阪府または兵庫県の漁業協同組合に加盟している漁ろう従事者に調査協力を依頼し、14か所の漁港、20人の漁ろう従事者に対しインタビュー調査を行った。インタビュー調査では主として①衝突の危険に関する項目(漁ろうに従事しているときや漁と漁の間での仕分け作業中にどのような場合に危ないと感じたか)、②大阪湾を航行する船舶に関する項目(大阪湾内で一番危ないと思われる海域、船舶はなにか)の2項目を実施した。インタビュー調査は半構造化面接法を用い、回答者の自由な回答を得た。
 今回の調査では以下の6項目について明らかになった。1.大型船舶の避航動作が十分でないと感じる時がある。2.やむを得ずよそ見をしてしまう時がある。3.大型船舶の通航量が多い区域が危ない。4.普段大阪湾を航行しないと思われる船舶が危ない。5.朝方と夕方が危ない。6.水先人が乗船した船舶は安全である。
 小型漁船で漁ろうに従事しているものに対し小型漁船の安全を確保し海難を防止するため、次年度は大型船舶に関するインタビュー調査し、実際の危険を明らかにすることと新たな方策を検討する予定である。

4.「船舶海洋への宇宙利用:政策と技術の革新に向けて」
                        セミナー開催

 日時 :2014.01.31  13:30~17:30  場所:神戸大学深江キャンパス 総合学術交流棟 梅木Yホール
 参加者数 :63名
講演内容 :・木内英一氏(NPO宇宙利用を推進する会 技術調査部長)
     「海洋と宇宙の連携というパラダイムシフト:新たな産学官連携の役割」

     ・吉田公一氏(一般財団法人・日本舶用品検定協会 調査研究部専任部長)
     「海洋と宇宙を巡る国際的な動向と今後の展開」

     ・香西克俊氏 (神戸大学大学院 海事科学研究科 教授)
     「衛星搭載合成開口レーダー・散乱計とメソ気象モデルを利用した洋上風力資源推定方法の開発」

     ・廣野康平氏 (神戸大学大学院 海事科学研究科 教授)
     「衛星を活用した海事に関わる研究課題の整理と展望」

     ・総合討論(コーディネーター:吉田公一氏)

 次年度以降は、第三部門が主体となって今回の参加者、企業と研究を進めることになった。

5. 国際活動
羽原敬二
・keiji Habara, ‘Mega-Disaster Prevention and Recovery Strategy after theGreat East Japan Earthquake,’ Korean Insurance Academic Society: KIAS(2013年度韓国保険学会創立49周年記念学術大会 日本保険学会派遣代表報告),大韓商工会議所 中会議室A, Friday, May 10, 2013.

・Keii Habara, ‘Risk Management : Theory and Practice,’ MEKONG-JapanTransport Logistics The 2nd Train the trainer Course in Japan at CrefeelKoto, Wednesday, April 24,2013.

松本宏之
海上保安協会アジア海上保安能力向上プログラム(留学生)

工藤栄介
神戸大学院生(留学生)への指導、WMUネットワークを通じた神戸大学の紹介

中原裕幸
中原がアメリカに本部を置く国際的な学会であるMarine Technology Societyの日本支部セクレタリであり、そのMTS日本支部が創立25周年を迎えたのに伴い、2014年2月3日東京にて、記念セミナーを企画・実施した。
 <MTS日本支部が創立25周年記念セミナー・プログラム>
◆開  会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・MTS日本支部副支部長 宮崎 武晃
◆紹  介 「MTS日本支部25年の歩み」・・・・・・・・・・・MTS日本支部セクレタリ  中原 裕幸
◆話題提供Ⅰ
(1)「海洋掘削技術と海洋掘削ビジネスの動向」・・日本海洋掘削㈱代表取締役社長 市川祐一郎
(2)「水産養殖技術の現状と世界動向」・・・・日本水産㈱養殖事業推進室室長  前橋  知之
◆話題提供Ⅱ
(1)「JAMSTECにおける海洋技術の現状と課題」・・・・・・JAMSTEC海洋工学センター 吉田 弘
(2)「海上保安庁における海洋調査技術の現状と課題」 ・・海洋情報部海洋調査課長 岩淵 洋
◆特別講演
「韓国の海洋産業技術の現状と将来」・・・・ 韓国海洋科学技術院(KIOST) 海洋政策硏究所長/
                     韓国海洋政策学会長、法学博士  權 文 相
                      〔通訳〕KIOST海洋環境産業室長 朴 洗 憲
◆閉  会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・MTS日本支部長 酒匂 敏次

なお、MTSは、2013年度に創立50周年で、9月下旬にアメリカ・サンディエゴで開催のOCEANS’13国際会議・展示会は50周年記念で開催され、日本から視察団を派遣した。


長谷部正道
・ 2013年6月 The 17th Air Transport Research Society World Conference
“Impacts of Free Trade Agreements on Civil Aviation Industries”

・ 2013年11月 The 4th Biennial Conference of the Asian Society of the International Law, “The Use of Privately Contracted Armed Security Personnel (PCASP) to Defend against the Threat of Piracy in Exceptional Circumstances”

藤本昌志
JICA技術参与 アルジェリア国ブーイスマイル高等海運学校大学院教育研究能力向上プロジェクト(2011年9月より継続)

6.論文等
羽原敬二
・Keiji Habara,‘The Establishment of the Asian Maritime Safety and SecurityOrganization,’ “Journal of Maritime Researches,” Vol. 3, No. 1, March 2013,The International Maritime Research Center, Graduate School of Maritime Sciences, Kobe University, pp. 15-30.
資料:
・「ボーイング787型機の運航停止と関連リスクの処理」航空交通研究会研究レポート95 『KANSAI空港レビュー』2013 Dec,12 No. 421,一般財団法人関西空港調査会,23-25ページ.

松本宏之
・ 海上衝突事件研究(海難審判)第28回貨物船第二龍王丸押船大豊山丸被押バージ大豊山丸1号衝突事件、松本宏之、海上保安大学校研究報告法文系第58巻第1号、平成25年10月
・ 海上衝突事件研究(海難審判)第29回作業船つるみ遊漁船ワコウ丸衝突事件、松本宏之、海上保安大学校研究報告法文系第58巻第2号、平成26年3月

長谷部正道
・ 「PFI/PPP推進のための課題と対策―英国における経験と新たな政府方針を検証して」運輸政策機構・一橋大学商学研究科行動研究報告書(2013年3月)p84-100
・ 「海賊対処のために民間武装警備員の乗船に関する諸外国の対応について」日本船長協会 月報”Captain” 第413号(2013) p2-11

藤本昌志
・ 親水水路におけるプレジャーボート航行に関する条例による規制 ―芦屋市の事例について―
  藤本昌志、小原朋尚、渕 真輝  日本海洋政策学会誌第第3号pp70-79 2013年11月

報告書
工藤栄介
「海洋への衛星利用に関する調査研究」海洋政策研究財団
中原裕幸
一般社団法人海洋産業研究会における各種調査研究事業等の報告書が多数あり。
藤本昌志
・ 船舶パドレと船舶恭海丸衝突事故に関する東京地裁平成25年9月19日判決に対する控訴審における意見書
・ 船舶パドレと船舶恭海丸衝突事故に関する東京地裁平成25年9月19日判決に対する控訴審における補充意見書

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